毛皮の歴史

かつてはなくてはならないものだった毛皮

人類史の初期の段階においては、植物繊維の利用が発見されるまで、動物の毛皮をまとうことが寒さなどから身を守るほとんど唯一の方法でした。
毛皮をまとうことによっておそらく初めて人類は生まれ故郷である旧大陸の亜熱帯地方から亜寒帯地方に進出したと考えられます。さらに火の使用で氷期の寒冷気候にさえも耐えて生き続けることができました。こうして、人類の一部は極寒な雪原を歩いて新大陸にまで進出できたのです。

古代から中世にかけて毛皮は、前時代と同様効果的な防寒着として使用され、一方で美しく貴重な毛皮具が権力者や富裕階層の権力もしくわ富の象徴として用いれられるようになりました。
当時、王侯貴族や富裕商人層とその家族たちが洋の東西問わない豪華で美しい毛皮具を装い、高額な毛皮を入手するため大金を投じ、毛皮業者と加工業者は原材料を求めて仲買人や採集人を各地へ、世界の各地まで派遣したのです。 この傾向は近代初期に入ってますます大規模なものとなりました。

ロシア人によるシベリア、北アメリカ太平洋の征服と開発またフランス人とイギリス人による北アメリカ北部および西部への拡大と開拓は、毛皮を求めての進出といっても過言ではないものでした。17・18世紀におけるヨーロッパ人の植民地獲得・拡大や北半球の温帯ー亜寒帯域におけるその動きの裏面には毛皮の入手という商業ないし経済的な目標が重要な用件として係わっていました。

東洋の大帝国=中国も古代から毛皮の一大消費国とあって、当初は近隣の異民族から貢ぎ物という形で入手していましたが近世以降ともなるとロシアやアメリカからもリス、ビーバー、ラッコなどの毛皮を大量に輸入するようになりました。

このように毛皮は人類の地球表面での生息域拡大と文化と文明との新しい要素(権力の象徴、シンボル、およびファッション)の創出とその展開に、さらに近隣あるいは遠隔地貿易上の重要な品目として東西の人々を結びつけ、あるいは新しい領土・植民地を獲得させる動きに大きな役割をはたしてきたのでした。

現代では重要性がすっかり低下してファッションの一部として利用されていますが、かつては人間の歴史を動かす鍵的な要因の一つとして大きな意義を持っていました。

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